日本財団 図書館


 

範な海洋を長期間、継続的、立体的にかつ同時性をもって多種類の海洋データを高精度で観測するためには、表層係留ブイを中心とした海洋観測ブイシステムを広範な海洋に多数展開する必要あります。このブイは、海面には気象観測用センサー、海中には多数の水温、塩分センサーを持ち、通信衛星を介してリアルタイムでデータを伝送してくるものです。
(2)音響データ伝送システムの開発
上述の海洋観測ブイシステムでは、緊張係留された海面ブイ上に配置された気象センサや、係留索に沿って取り付けられたCTDや潮流計等のデータを、衛星通信を用いてリアルタイムに収集することを計画しています。ところが、音響式流向流速計は、係留索の途中に取り付けることができないため、独立に係留する必要があります。この音響式流向流速計のデータをブイに転送することを目的に、音響データ伝送システムの開発を行っています。1995年度は、実証試験機を製作し、1996年2月に父島西方海域において水平距離約1,500mの実海城通信試験を行い、良好な結果を得ました。
(3)「みらい」の建造
地球環境の変動をより深く把握するためには、大気、海洋間における熱や物質の循環メカニズムをより精密に調査しなければなりません。これを目的として、1994年より旧原子力船「むつ」を大別毎洋観測研究船「みらい」へ改造することとなりました。「みらい」の大きな特徴は、総トン数8,7100トンと大型であることに加え、船体動揺を低減する新型の減揺装置を搭載することで、これまでの観測粉では難しい海象条件でも観測が可能となることです。主要な観測ミッションとしては海洋観測ブイの展開が挙げられ、効率よくブイを運搬、設置、回収し、船上でも点検、修理できるハンドリングシステムが装備されています。このほか、CTD、大型採水溶、ピストン

047-1.jpg

図−2 「かいれい」の完成予想図

コアラー、曳航体等観測機器を用いた調査ができ、採取された海水や大気中に含まれる微量物質の分析のための装置が充実しています。また、各装置で得られたデータは船内に装備されたLAN(Local Area Network)によって、データベースが構築され、各研究案、居室からこれらのデータにアクセスすることが可能となり、まさしく動く洋上研究所として機能します。「みらい」は1997年10月に当センターに引き渡され、その後、青森県むつ市を母港とし、海洋観測ブイの展開作業や地球規模の環境変動の解明をメインテーマに、日本や世界の多くの研究機関の研究布が利用する共同利用型の観測船となる子定であり、今後、大きな成果が期待されています。「みらい」の完成予想図を図−3に示します。
4.3 水中音響関連
(1)水中画像伝送システムの研究開発
潜水船による作薬効率向上のため、潜水調査船で得られた深海底のTV画像を海上の母船に伝送する装置を開発する目的で、新しい送波器の開発や高速デジタルル信号処理技術及び画像データの圧縮等の様々な研究を行ってきました。そして、現在までに「しんかい6500」用と「しんかい2000」用の装置を実用化し、約8秒(「しんかい6500」用)に1枚のスピードで鮮明なカラー画像を連続的に伝送することができるようになり、潜水調査において様々な新発見に寄与しています。
(2)海洋音響トモグラフィ技術の研究開発
海洋観測研究部が中心となって進められている、海洋音響トモグラフィプロジェクトチームに参画し、海洋音響トモグラフィシステムのハードウエアについて検討・製作を行っています。また、初期段階での実毎城実験に

047-2.jpg

図−3 「みらい」の完成予想図

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION